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2018日本美容皮膚科学会で学んだ4テーマ

2018日本美容皮膚科学会で学んだ4テーマ

· 奥野公成 · NEW, 学会・セミナー · No Comments · Kosei Okuno

先日東京国際フォーラムで行われた日本美容皮膚科学会に参加してきました。

自分の業務の最新知識をふんだんに見ることができ、高揚感に溢れています。

学会参加は最も効率のよいインプット方法だと思います。

発表によるアウトプットをされた先生方は、この数十倍は勉強になっているのでしょうね。

最新の知見を共有させていただいた先生方にとても感謝しています。

さて、今回学んだことを下記に振り返りたいと思います。

いつもながら同業者以外の方、読みにくくて本当に申し訳ありません。

一番最初に聞いたテーマはピコレーザーでした。

Qスイッチレーザーとは主にレーザー光がナノ秒の時間だけ出るもので、ピコレーザーはピコ秒の時間だけ出るものです。1ナノ秒は1000ピコ秒。

ピコレーザーは現在、しみ・刺青治療で主に使われています。

では学んだことを述べていきます。

・しみや刺青と違い、脱毛や血管治療においては、thermal damage timeという概念が大事である。

破壊したい対象物がレーザー光に直接反応するものではない場合(例えば血管、毛の生産工場の破壊目的)に用いられる。

・ピコレーザー照射により刺青の色素を小さくばらばらにするとその粒はリンパ節まで勝手に運ばれる。

・レーザーで多様な色素を減らしたい場合、照射時にその補色となる色のレーザーをうつ。例えば赤い色の刺青を薄くしたい場合は緑色のレーザーをうつのがよい。532nmの波長のレーザーはグリーンレーザーと言われている。

余談ですが、手術室の術衣が緑なのは、精神が落ち着く色であることと、緑が血の色である赤の補色だから血が見やすいため、目が疲れにくいためと聞いたことがあります。

・肌色の刺青にはチタンや鉄が入っている可能性が高いので、必ず試し照射を行う。黒く変色したら手術でその部位を切除するか1064nmの波長のレーザーで薄くしていくしかない。

・刺青の総治療回数を予測するものにThe Kirby-Desai Scoreが用いられる。これは、スキンタイプ、刺青部位、刺青の色、インクの量、瘢痕の有無、色素の重ね方等を用いて総照射回数を予測する方法である。

肌色が濃いときや顔以外の部位は刺青治療は難しい。

・刺青治療の有効な方法として、照射20分後にまた照射する二度がけの方法や、レーザー照射後に多数の点状穴をあけるフラクショナルレーザー(もしくはフラクショナル高周波)照射の方法がある。

フラクショナル照射治療を行うと体表の外に刺青の色素が排出されやすくなる。また、フラクショナルを強く深めにうつことで瘢痕の治療にもなっている。

しかし、盛り上がっていない刺青にはフラクショナルは強くうたない方がよい。元々瘢痕が乏しいので。

ちなみに、フラクショナルレーザーをうたないときも、普通のレーザー照射後に刺青の色素は体表に少し排出されている。

・ガラスで圧迫しながらレーザーを照射する(compression法)は、紫斑(内出血)の形成が少なく、皮膚が薄くなるためレーザー光の浸透性も上がる。疼痛も少ない。

・厳密には刺青レーザー治療の間隔は長ければ長い方がよいが、治療回数が少なくなっても総治療期間が長くなるので、現実的には患者との相談が必要になる。

・ピコレーザー照射において、波長、対象疾患により照射をどこでやめるかの皮膚見た目の照射直後エンドポイントは違う。

・Qスイッチレーザー(ナノ秒レーザー)に抵抗性の刺青でもピコ秒レーザーが効くことがあるので試す価値はある。

・刺青に対しU-CO2レーザー+Qスイッチレーザーの組合わせもよい。しかし、治療に2年前後かかり、炎症後色素沈着や色素脱失が出やすい。

・熱緩和時間より短いパルス幅(照射時間)でレーザーを照射すれば、熱を逃す前に対象物を破壊できる。

熱緩和時間とは、温度が下がって元の温度に戻るまでにかかる時間の半分の時間のことである。

熱緩和時間より短い時間で十分なエネルギーを破壊対象物に与えると、破壊対象物だけに熱がたまり、その周囲に熱の害を及ぼす前に対象物を破壊できる。強火で一気に加熱するイメージでしょうね。

ちなみに、普通のしみの原因であるメラニン顆粒の熱緩和時間は50ナノ秒、日本橋院のQスイッチ(ナノ秒)YAGレーザーの照射時間は532nmで5ナノ秒、銀座院のピコ秒YAGレーザーの照射時間は532nmの波長で375ピコ秒・1064nmの波長で450ピコ秒である。1ナノ秒は1000ピコ秒。

50ナノ秒(50000ピコ秒)>5ナノ秒(5000ピコ秒)>450ピコ秒>375ピコ秒 なので、どのレーザーも熱緩和時間より照射時間が短く、メラニン顆粒を破壊するのに十分かと思います。

・普通のしみ治療において、Qスイッチレーザーでの炎症後色素沈着の発現率はアジア人では20%である。

・手の甲に見られる角化傾向のある老人性色素斑は、QスイッチやピコレーザーよりもロングパルスレーザーやIPLがよい。

二番目に聞いたテーマはイオン導入についてでした。

毎日のように用いられている名脇役の機器です。

・イオン導入で皮膚に通りやすいものは、分子量500以下の小さな物質や高脂溶性の物質である。

・イオン導入は低電流・定電流、エレクトロポレーションは高電圧を特徴としている。

ちなみに、ソノフォレーシスは超音波を用いて物質を導入している。

・イオン導入は電気反発の駆動力で中分子までの物質を皮膚に入れていく。エレクトロポレーションは皮膚に穴を開け、受動拡散で物質を皮膚に入れていく。エレクトロポレーションは物質に対する駆動力を持ち合わせていない。

・物質の分子量が大きくなると、皮膚の角層だけがバリアではなくなるので、皮膚の中で動きにくくなる。濃度勾配だけで物質は拡散しないので、孔を開けるだけではなく電気的駆動力が大事になってくる。

・通常、分子型化合物と違い、イオン型化合物は皮膚(生体膜)を透過しない。受動拡散では、イオン型化合物の皮膚透過性は低い。

・イオン導入に用いるグリシルグリシン(GG)は毛穴縮小に効く。トラネキサム酸(TA)は赤みにも効く。

・トラネキサム酸とアスコルビン酸リン酸Na、グリシルグリシンとアスコルビン酸リン酸Naのイオン導入においては、アスコルビン酸リン酸Naはいずれも後の導入の方がよい。

TA→ビタミンC、GG→ビタミンC

・鼻の毛穴の詰まりは角層、皮脂、常在菌が集まっている。

三番目に聞いたテーマは注入治療、PRP(多血小板血漿)、培養皮膚移植についてでした。

最近自分の中で毛髪についてのPRP治療へ興味が上がっており、イスラエルの先生のPRP治療説明が毛髪治療について多くさかれていたのはタイミングがよかったと感じています。

・ゴルゴライン等の改善など、ヒアルロン酸のたるみ治療では、皮膚の下の靭帯を支えるように靭帯の尾側にヒアルロン酸を注入する。

・偽性靭帯は浅筋膜と皮膚をつなぐだけで骨には繋がっていない。

・法令線、たるみの改善のため、法令線基部(鼻翼付近)に片側0.2~0.4mlのヒアルロン酸を骨上にうつとよいが、動脈に穿刺しないよう注意する。

・血管を穿刺しそうなリスク領域では、可能なら10秒以上吸引テストを行い、逆血があるかどうか確認する。

・ヒアルロン酸注入時は、動脈圧より低い圧になるようにゆっくり注入するとよい。注入最中に皮膚の蒼白変化を見たら、あわてて針を抜かず、一旦吸引する。詰まっているヒアルロン酸が抜けるかもしれないので。

・PRP注入の毛髪治療においては、同じ人にうっても頭部左右で効果が違うなど反応性に差があることがある。

・AGA(男性型脱毛症)の人にPRP注入2回を行い、70~75%の人に有効だったとのこと。

・ある程度の時期、集中して注入したあとは、1年に1回などメンテナンス的に治療を行っている。

・女性の薄毛にはフィリチン、葉酸なども採血で調べている。

・指、手の甲のしわや張り感にもPRP注入は有効。

・再生医療には、外で完成させたものを入れる治療(培養皮膚など)と完成していないもの(PRPなど)を入れる治療の2種類がある。

・培養表皮の生着には真皮が必要。

・培養表皮移植で白斑治療も行える。

・PRPが毛髪治療に有効な理由

AGAの患者は頭皮が薄くなっており、PRPは皮膚を厚くしてルーズにし毛包の自由度を増す説と、皮膚を厚くして血流を改善させる説がある。

要は芽や苗が育つ畑を厚く肥沃にしているということだろうか。

PRPによる毛髪改善効果は、血小板から放出される成長因子を通じた直接毛包作用ではない可能性もある。

・PRPは一言で言うと「やる気スイッチ」なのかもしれない。

四番目に聞いたテーマはオーソドックスな美容色々の話題で、美白剤、CO2レーザー、紫外線についてでした。

・カミツレエキスとトラネキサム酸は、メラノサイトへの情報伝達を抑制し、メラニンを作らせないようにする。

・以前、鐘紡の化粧品で問題になったロドデノールによる脱色素斑は、化粧品使用部位とほぼ一致する。しかし、非外用部位にも脱色素斑が見られることがあり、尋常性白斑との完全な鑑別は困難である。

・ロドデノールの外用をやめると、脱色素斑は自然に回復することが多い。

・CO2レーザーにおいて、ウルトラパルスのモード(一定短時間強く出るのが連発)は、スーパーパルス(一瞬だけ強く出るのが連発)より凝固・蒸散に優れている。

・ホクロは無理して一気に全部とろうとしないことが大事。

・眼瞼黄色腫をCO2レーザーで焼く場合、眼輪筋にちょこちょこ入っている黄色い部分もfocus mode(うつ距離あけてぼやかす打ち方)で焼くとよい。眼瞼黄色腫の治療においては再発の可能性を伝えておく。

・汗管腫、脂腺増殖症、眼瞼黄色腫のCO2レーザー治療においては、真皮内の病変は一気にとろうとしないことが大事。

・毛細血管拡張性肉芽腫は無色素性悪性黒色腫との鑑別を必要とする。

・色素幹細胞は毛のバルジ領域にあるため、日光黒子(老人性色素斑)の治療においては、毛孔も焼くとよい。

・汗孔角化症をCO2レーザーで焼く場合、ring abrasionでよい。

しかし、焼いた後は、扁平上皮癌(SCC)、ボーエン病が出ないかフォローしていくことが大事である。

・にきびあと等で行う顔皮膚のレーザーによる剥脱治療(abrasion)は、皮膚色の濃い人ほど色素沈着が出やすい。

・キャンデラ社のフラクショナルレーザー「コア」は、fusionモードとdeepモードをうまく組み合わせて使うとよい。

・線状ではなく幅広の表皮母斑は、CO2レーザーで削ると広がる可能性があるので、切除したほうがよいという説がある。

・SLE(全身性紅斑性狼瘡)の初発症状は蝶形紅斑が最も多い(約30%)。

・DLE(円板状紅斑性狼瘡)から扁平上皮癌(SCC)が発生することあり(2.3~3.3%)。

東京国際フォーラムは京都国際会館同様広いので行くといつも迷ってしまいます。

学会参加は受け身な勉強ですが、効率よく最新の知識を勉強できますね。

知識のシャワーを浴びている気がします。

第一線の先生方は本当にすごいなあと思いました(小中学生の読書感想文みたいな言い方ですが)。

このインプットの何パーセントを自分はアウトプットできるでしょうか。

自分も日々こつこつ積み重ねていけば、要らないものだけなくきっとよいものも溜まっていくのでしょうね。

余談ですが、東京国際フォーラム内に、来年日本で開催されるラグビーワールドカップのPRモニュメントがありました。

高校時代ラグビー部に所属していたのでラグビーにはとても興味があり、とても楽しみです。