暑い夏が近づいてきましたね。
夏になると徐々に薄着になり丈の短い服を着る機会が増えてくると思います。
ところで、皆さんの中で顔(特に鼻・頬)、スネ、ふくらはぎ、大腿に浮き出た血管に悩んでいる方はいませんか?
今回は東京皮膚科形成外科日本橋院で行っている血管治療について紹介致します。
と言っても皮膚表面近くの細いしゃわしゃわした血管を目立たなくさせる表面レーザー照射治療の話です。
脚のぼこぼこぶよぶよの血管のふくらみ(瘤 こぶ)については治療はできませんので。
それは典型的な「the下肢静脈瘤」ですので、いい医者を紹介します。
では以下に詳しく説明致します。
先ほど「the下肢静脈瘤」という言葉を使いましたが、医学的にはそのような言葉はありません。
いわゆる典型的な血管ぼこぼこ下肢静脈瘤である側枝型静脈瘤と伏在型静脈瘤をそう呼んでみました。
下肢静脈瘤とは、心臓に血を返すルートの血管である静脈の弁が不調になり、上手く返せなくなかった血がその血管にたまって血管が膨れた状態です。
下肢静脈瘤は血管径が細いものから以下の4種類に分かれます。
(1)クモの巣状静脈瘤(径1mm以下の細い血管)
(2)網目状静脈瘤(径1~2mmの細い血管)
(3)側枝型静脈瘤(径3~4mm)
(4)伏在型静脈瘤(径4mm以上)
メディアで一般によく取り上げられる下肢静脈瘤は上記の(3)か(4)だと思います。
当院で治療できるものは血管径が細い上記(1)と(2)になります。
手術の適応は、重苦しさなど自覚症状があり、かつ太い血管の静脈瘤(伏在型静脈瘤)です。
当院の治療方法ですが、ロングパルスNd:YAGレーザー(Gentle YAG、キャンデラ社製)という機械を用います。
赤みの治療レーザーはこのレーザーとパルス色素レーザーの二つが世の中ではよく用いられています。
ロングパルスNd:YAGレーザーの波長は1064nm、パルス幅は可変式(0.25~300msec)で、皮膚冷却装置がついており、レーザー光の発射とほぼ同時に冷却ガスが発射されます。
厳密には、ほんの少し冷却ガスが抜け駆けしてレーザー光より早く出ています。
場を整えて光を待ち受けているのです。
皮膚を冷やした状態にしてレーザー光によるやけどの皮膚ダメージを減らしているのです。
パルス幅というのはレーザー光が出ている時間の幅です。
同じエネルギーを出すとしたら、時間が短い方が強く一瞬で焼けます。
しかし、ステーキと同じで、それだと中まで焼けません。ある程度時間が長い方が中まで火が通ります。
焼かれる物体によってこの時間を適切な長さにすることが大事です。
このレーザー光は黒い色や茶色だけでなく赤い色にも強く反応する特徴をもっています。
ロングパルスNd:YAGレーザーが効く原理ですが、赤血球の中のヘモグロビンという赤い色素にレーザー光が反応し、赤血球に接している血管が熱変性して、血管が閉塞していきます。
1064nmの波長は赤血球中のヘモグロビンには吸収されますが、メラニンへの吸収度は低く、また、深達性が高い(3~4mmの深さまで届く)ことにより、顔・体・下肢のクモ状静脈瘤、赤ら顔、脱毛やしわに対する若返り治療などに使われています。
しかし、あまり深部にレーザー光が到達すると瘢痕形成のリスクが上がるので、血管病変には小さめのスポット(主に径1.5mmまたは3mmのもの)を使用します。
また、1064nmのYAGレーザー光は、ダイレーザー(短パルス色素レーザー)より深い病変・太い血管にも効くので、盛り上がった毛細血管性奇形(単純性血管腫)や盛り上がった乳児血管腫(いちご状血管腫)などもよい適応となります。
1064nmのYAGレーザーは短パルス色素レーザーより痛みは少ないのですが、内出血の可能性はやや高いです。
気付かれた方もいるかもしれませんが、シミ治療ではQスイッチYAGレーザーやピコセカンドYAGレーザーという名前のYAGレーザーがよく使われます。
「ロングパルス」という名のレーザーはこれとは別物で、これはQスイッチやピコセカンドという名のものより一発のレーザー光が長い時間出ます。パルス幅が長いということです。
「YAG」というのは、イットリウムとアルミニウムのガーネット構造という光を出す装置のことです。
カタカナの嵐で分かりにくいですよね。
細かい話ですが、シミのレーザー治療は茶色のメラニン色素に反応してそれを作りもっているメラノソームという器官を破壊します。
一方、先ほどお伝えしましたように、細い血管のレーザー治療は、赤いヘモグロビンという赤血球色素に反応させ高温にし、周りの血管も一緒に高温にして血管を焼いてつぶしていきます。
しかし、それはなくてもよい血管なので心配なさらないでください。
異常な血管がなくなってもそれをカバーしてくれる正常な血管が他にいくらでもにあります。
また、細い血管に針を刺してポリドカノール等の薬で閉塞させる硬化療法もとてもよい治療ですが、レーザー治療のメリットは体内に薬を入れるリスクが全くないことと、硬化療法の針を刺しにくいような極めて細い血管も治療できることです。
そのかわりレーザー治療は繰り返しが必要になります。
さて、レーザー照射の手順ですが、皮膚表面から浮き出た血管に沿って皮膚表面にレーザー光を照射していくだけです。
シミのレーザー治療のようなイメージです。
照射時の輪ゴムではじかれるような軽い痛みと照射後赤み(もしくは紫色の変化)は必ず出ます。赤みは数日から2週間は続きます。いわゆる軽いやけどが起こるわけです。
ときに色素沈着が出ますが、これは何もしなくても数か月で消えていきます。
照射後は抗生物質の軟膏か軽いステロイドの軟膏を塗っていただきます。
下記の写真は初回の方の照射直後のものです。大腿の写真がなくてすみません。
下記の2枚は照射2日後のものです。今後変化していくかと思います。
普通のシミ治療と一番違う点は、3か月以上空けて何度も繰り返さないといけない点です。
極端に小くて細いもの以外だと、最低3回は必要と思ってください。
かなり細い小さな血管ですと1回で見えなくなることもありますが、通常は何回かかけてゆっくりゆっくり血管が目立たなくなっていきます。
最初のうちははうてばうつほど薄くなります。しかし年単位になると徐々に効果が乏しくなっていきます。
ものによりますが、最初のひどさを10とすると、5回行ってなんとなく4くらいになる印象です。
治療の料金ですが、現在治療写真にご協力いただけるモニター患者さんを募集しており、手のひら一枚分の範囲で2万円+諸経費(受診料・軟膏・税金等)で行わせていただきます。
ちなみに、シミ治療のレーザー照射は、1平方センチメートルで2万円+諸経費です。
ご興味おもちの方は、話だけでも結構ですので東京皮膚科形成外科日本橋院(03-6231-1555)まで気軽にご連絡ください。
受診の際は、私奥野が説明致します。
話は変わりますが、サッカーワールドカップが始まりましたね。
超一流が集まりますから、日本代表以外の試合も興味深い試合が多いです。
日本代表に興味があるのは当然ですが、個人的にはアイスランドのような人口三十数万人の小国代表が大国に善戦しているのを見ると、非常に胸うたれます。
引き分けたアイスランド・アルゼンチン戦は、アイスランド国内の視聴率がほぼ100%だったと聞きました。
アイスランドサポーターによる手拍子の応援も独特で聞き入ってしまいますね。
自分が北国の小さな自治体の出身だからでしょうか。
彼らには頑張ってほしいものです。
必死に守る寒い国の青年たちの姿に、何故か感情移入してしまいました。
4年後の暑い中東でも活躍してくれることを願っています。