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頭のイボを取ってもそこにはまた毛が生える。

頭のイボを取ってもそこにはまた毛が生える。

· 奥野公成 · NEW, 毛髪 · No Comments · Kosei Okuno

頭を洗っているときに、ふと手で盛り上がったイボを触れることはありませんか?

中高年の方に多いのではないでしょうか。

顔も頭も体も、何かが盛り上がってくると気になり触りたくなりますよね。

自分という人間が成長しなくなっても、いらないイボは毎年成長していきます。

出っ張って盛り上がった瞬間に罪深いもの?になります。

どこか人間界と似てますね。

さて、今回は脂漏性角化症という非常によくある良性加齢性のイボを炭酸ガスレーザー(CO2レーザー)でとった方の経過を紹介致します。

部位は頭です。

一番心配なのは髪の毛がまた生えてくるかどうかですよね。

イボをとっても大きなハゲが残ったら見た目が悪くなりますから。

結論ですが、毛はまた生えてきますのでご安心ください。

毛がまた生える理由は、この脂漏性角化症という良性のイボは根っこが浅いからです。

ですから毛を作っているやや深い大事な層まで焼く必要がないのです。

ちなみに、下記の写真からも分かるように、腫瘍自体からも毛が生えていますよね。

この腫瘍が毛根を破壊していない証拠です。

 

治療の詳細ですが、歯医者さんで使っているのと同じ局所麻酔注射をイボの部位のみに注射して、その後に炭酸ガスレーザーでジューっと焼くだけです。

写真のような大きなイボでも5~10分ほどで終わります。

このくらいの大きさのイボだと、料金は込み込みで約2万円です。

では順を追って写真をお見せしたいと思います。

 

 

初日(患者さんが毛のことを心配されてましたので3分の1だけ焼きました。よく見ると焼いた部分にも毛が見えます。深く焼いてないので。)

 

初日から1か月半後(焼いた部位に毛が生えているのを確認し、患者さんに安心していただいたところで残りを全て焼きました。)

 

初日から約2か月後(焼いた部位全体に毛が生えています。盛り上がりは完全になくなり、平らになりました。)

よく見ると端の部分が少し灰色になってますね。

焼いたことによる色素沈着か取り残しなのだと思います。

しかし、もし取り残しだとしてもこの腫瘍がまた焼く前と同じ大きさに戻るには非常に長い年月がかかりますから、すぐの追加照射はしない予定です。

中高年の方ですと、これで人生を逃げ切れるでしょうから。

通常は、気になる出っ張りがなくなって毛が再び生えれば、皆さん満足されます。

ちなみに、赤みは数か月、色素沈着は半年ほどでなくなります。

頭は髪があるので、皮膚が何色でも見えませんが。

 

追伸ですが、治療初日から3ヶ月後には下記のようになっていました。

もうどこにイボがあったのかもわからないくらいで、場所を患者さんに教えてもらったくらいです。

毛もしっかり生えています。

治療2ヶ月後に残っていた灰色は消えてしまったので、色素沈着だったのだと思います。

 

 

写真で治療の経過を追い、焼いた直後の傷と傷が治った最後の状態を見ると、普段自分が頭のイボではどの深さまで焼いてどのくらい取り残しているのかがよく分かります。

少しだけ自分にフィードバックができました。

顔のイボだと取り残しは外からはっきり見えてしまうので、もう少しだけ深く焼きます。

頭は髪の毛がハゲてしまう問題がありますし、顔のホクロ除去は傷あとの問題があるので、炭酸ガスレーザーでの処置は無難に焼くのがよいと思っています。

 

今回のような頭皮の良性腫瘍やホクロを手術でとる治療もありますが、手術は確実に禿げる部分ができると思っています。

切除した瞬間、脂肪が見えるまで穴が開きます。その後表面の皮膚を糸で縫い合わせます。

縫い合わせた瞬間はぴたっとくっついていて何となく穴が塞がったように見えます。

しかし、時間の流れとともにぴたっと縫い合わせた部分は開いていきます。

なぜなら皮膚は外側に引っ張られる性質があるから。摩擦もされますし。

風船に穴をあけたら外に穴が広がるイメージです。

布の塗い合わせた部分を垂直方向に引っ張ったら縫った部位はほつれて一生広がったままというのと一緒です。

頭の皮膚はスイカのようなものだと思ってください。表面の皮膚はスイカの硬い皮です。皮膚の下の脂肪はスイカの赤い実の部分です。

スイカの皮に赤い実が見えるまで穴を開けてそれを穴を塞ぐように縫うのは穴が広がる力に抵抗するすごい力が要るのです。

結局その力に抵抗しきれなくて穴は結局広がっていきます。

もう一つ例えですが、1枚の板の真ん中に汚れがあるとします。板を半分に割って汚れ部位を切り取ります。残った板同士を何カ所かアロンアルファで点々とくっつけます。

しかし板を割らず板の表面の汚れを表面から薄く削った方が板の強度は保たれるのではないでしょうか。

なぜなら割った板同士が点ではなく元来の面でつながっている方が極めて強度が強いから。

若い頃に頭を切って怪我をした方は多いと思いますが、今現時点でどの方もやや楕円状に傷痕は広がっていると思います。

その傷痕も縫ったときはぴたっとくっついた1本のかすかな線だったはずです。

腫瘍切除と違って皮膚が余分にもっていかれていない切り傷ですら頭の縫った線は開いていくのです。ピンと開くすごい力が常に加わっている証拠です。

 

頭皮の傷あとを大きくしないコツはいかに切除を表面の皮膚の層までにとどめるかです。メスでもレーザーでも。

切除を皮膚の層にとどめれば穴は広がりにくいですし、頭であれば毛もほぼ生えてきます。

ですから僕はCO2レーザーで皮膚表面を削ってことをすますことができるものはそれで削るだけにしています。通常は脂肪が見えない層までしか焼きません。

 

頭のイボでお悩みの方はいつでもお気軽にご相談ください。

 

さらに追伸

上記頭イボ患者さんのCO2レーザー照射5年後の写真を撮影しました。

整髪料がついているので毛が束になっており照射前とは髪の雰囲気がやや違います。照射部位の毛はしっかり生えています。ただ、拡大してよく見るとほんの少しだけ再発が見られます。

概ね経過良好と言えるのではないでしょうか。

 

補足

上記の患者さんとは別人ですが、ある頭のイボの患者さんのご厚意でCO2レーザーで焼いた部位の拡大写真を使わせていただくことができました。

下記に示します。

レーザー照射部位で毛が1本1本残存して見えるかと思います。ハゲにならないよう毛をしっかり守れる層で焼いてます。