先日アラガン社(本部はアイルランド)主催のヒアルロン酸注入セミナーに行ってきました。
オーストラリアの先生(Steven Liew先生)が現地で行う治療が生放送の衛星中継でとばされ、それを東京日本橋の会場で見ました。
おそらく先生が一番言いたかったことは、「患者の顔全体のバランスから足らない部分をよく見つつ、特にアジア人は顔面中央付近にハイライトを作るとよい」ということではないかと僕は勝手に理解しました。
日本のドクター向けのセミナーですから、ライブで注入治療を受けた方もアジア系の方が選ばれていました。
当日はそれ以外に顔の解剖学、米国トップレベルクリニックの接遇、部分痩せ機械の紹介などの内容もありました。
アラガン社の製品は厚生労働省の認可がなされているものがメインであるためか、その製品を用いる医師にweb講習以外のフォローアップ講習が時折なされています。
ですから、認可部位のためか今回のようなセミナーで鼻、唇にうつシーンはありません。
この会社は主にボトックス(ボトックスビスタ)とヒアルロン酸(ジュビダーム)という注射製品を販売している会社なのですが、自分の日常診療と関わり合いの深い会社・製品です。
どちらの製品もしわ治療が主な用途です。
しかし、それ以外にもボトックスはエラ・ふくらはぎを細くする、多汗症、ときに毛穴を目立たせなくするなどの用途があり、ヒアルロン酸は鼻や顎を高くする、こめかみなど老化によるくぼみを埋める、リフトアップなどの用途があります。
ボトックスは軽く筋肉を動きにくくさせる「薬」で、薬の薬効を利用しています。効果は4ヶ月。
ヒアルロン酸は、くぼみの底上げ盛り上げ埋め立てゲルです。薬の薬効ではなく凹みの下から物理的に支える効果が主体です。効果は6ヶ月~1年半。
ボトックスもヒアルロン酸も一言で言えばただの注射なのですが、されど注射とも言えます。
通常の副作用は注入時の軽度の痛み、その他は刺し口の発赤で発赤は1日~数日で落ち着きます。稀に内出血が出ますが、これは目立たなくなるまで1~2週間かかります。
当院での料金は一部位に1~8万というケースが多いです。安全性が高く意外と色々な用途に使えます。
いずれもローリスク・ミドルリターンを狙える治療であり、治療を気に入られて繰り返し行う方が多いです。
手術以外の治療のコストパフォーマンスは患者さんが繰り返しその治療を行いに来院するかでしか分からないのですが、かなりコストパフォーマンスの高い治療です。
例えば、化粧品を一兆円分買っても医療製剤のようにしわが薄くなったりとれたりするか分かりませんので。
一番強い猫でも一番弱いライオンに勝てないのではと日々感じています。
男性的思考でしょうか。
ただ、安全性が高いとはいえ、どこで落とし穴にはまるか分からないので、今回の顔面解剖の復習もためになりました。
日々、謙虚に慎重にいきたいと思います。
さて、メインのヒアルロン酸注入の内容ですが、下記の印象を受けました。
アジア人の顔は頬骨の張った平べったい正面面積の大きな顔が多くのっぺらした印象を与えます。
ですから、両頬骨の一番隆起しているところよりもより両頬内側の鼻近くにうち奥行きを感じさせる立体的な顔を目指すのがよいと言えます。
小顔の錯視が生まれるのではと感じました。
大型トラックの正面視より新幹線の正面視の方がスリムに見えそうですよね。
正面からのガタイは大して変わらないと思いますが。
口のわきのしわを「カッコ」と表現していたのですが、そこにジュビダームを線に直角に引きながら浅くうっていく方法も試してみたいと感じました。
以下こめかみ部位の注入については私の記憶が曖昧ですが、針の先を滅菌してあるその注射針ケースの内部で鈍にし、浅側頭筋膜と深側頭筋膜の間にうつと話していたような気がします。こめかみはかなり多量にヒアルロン酸が入るところであり、骨膜上だと打ちやすいとは思いますが、表面からの隆起は見えにくくなります。しかし、あまり浅く打ちすぎると今度は表面がでこぼこになります。僕の経験ですとこの部位に浅くうつと圧迫してマッサージをしてもなかなか綺麗に解消しにくいです。ですから深すぎず浅すぎずその間がよいのでしょう。先端が鈍になった針先が深側頭筋膜を感じられるものなのか機会があれば感じてみたいと思います。この部位は顔面神経側頭枝も近くを走っており、鈍にするのはその点についてもリスクを減らすのではないかと感じました。ちなみに、こめかみ部位は先生は初心者は骨膜上でもよいと話していました。
鼻翼深層辺りの骨上に入れる注入では、法令線は当然浅くなると思うのですが、下から鼻を見たときに鼻翼基部が挙上し、おそらく鼻が少し高くなって立体的な顔になる効果もあるのだと思います。
他の先生から細長い鼻孔が円くなる変化もあるのではとの話もありました。
座長の先生も触れていましたが、Liew先生が様々な個所の注入時に左手の指を使い、余計なところにヒアルロン酸がいかないように気をつけていたのも大事と感じました。
また、麻酔入りのヒアルロン酸は注入すると付近がしびれることを最初に伝えておくのも大事と感じました。
今回治療を受けられた患者さん方は若い方ばかりだったのでフェイスラインを補正するJw-codeの打ち方は使われていなかったようです。
このcodeは新しくて、実は僕はこの注入前後の変化を今回ライブで見てみたいと思っていました。
以前述べた顔のMD-codeにLiew先生は触れていませんでしたが、結局効果の出るポイントはどのドクターも打ち続ければ一緒になってくるのだと思います。
将来的には人工知能が顔のアセスメントをして、どこに何の製剤を何mlうてばよいのか教えてくれる日が来るのでしょう。
海外の先生のセミナーでは自分には想像のつかない方法が出てくるのではと何となく心のどこかで期待してしまいます。
トップドクターは多くのギャラリーに見られていても注入中たくさん話をしながらでも安定したパフォーマンスを発揮できるのだなと感じた一日でした。