先日仙台で行われました日本皮膚科学会総会に参加してきました。
国内の一番大きな皮膚科学会で、毎年様々なことを学ばせてもらっています。
最低あと30年行う仕事ですから、常にブラッシュアップは大事だと思っています。
知りたいという欲求は、人間の本能なのかもしれませんね。
下記に私にとっての新しい知見を述べさせていただきます。
同業の方以外にはごめんなさいと先にお伝えしておきます。
1.主に夏にひどくなるエクリン汗嚢腫はボトックスを皮内にうつことで改善する。
2.汗管腫の治療では眼輪筋に至る深さまで焼かない。間質の増生をなくすことが大事。ミーシャー型母斑も汗管腫も寛解を目指すという考え方もある。
3.癒合型汗管腫は、少しずつ間引きして減らしていく。一部位一部位、中央に真皮組織が見えるまで焼く。
4.汗管腫は黄色腫と違い、下床で汗腺を巻き込んでいない。だから汗管腫は、焼いても汗腺が温存される可能性が高く、瘢痕を生じにくいのでは。
5.エルビウムYAGレーザーは、CO2レーザーと違い止血力が弱いので、真皮の出血で汗管腫焼灼のエンドポイントが分かる。
6.焼灼系のレーザーは、渦巻状に焼くと中央が一番深い皿状に焼ける。
7.深在性稗粒腫は、中央にレーザーで穴を開けてから取り出す。
8.汗管腫治療後の痒みにはリザベンがよい。
9.医薬部外品は東アジア独自の製品区分であり、EU、ASEAN、アメリカは医薬品と化粧品のみの区分。日本の化粧品は全成分表示であり、配合成分が多い順に上から記載される。
10.ロングパルスアレキサンドライトレーザーは、浅いしみ(浅在性色素沈着症)には効く。
11.レチノール、レチナール、レチノイン酸の順に作用する受容体に近くなり、効果が高くなる。この3つではレチノイン酸が一番効果が高い。
12.外用ステロイド自体もメラニンを減らす作用がある。
13.ハイドロキノンは病変以外の部位には塗布せず、剤形が違うものを重ね塗りしないよう気をつける。休薬期間をおくこととも大事。美白化粧品の併用にも気をつける。
14.顔の赤いしみは、日光角化症も疑う。ダーモスコピーでstrawberry patternが日光角化症の9割以上に見られる。
15.日光角化症のイミキモド外用治療は、赤みが消え、かつサンドペーパーサインがなくなるまで行う。
16.高周波治療は、レーザー治療と違い、パス数をあげると深達度が増す。高周波はレーザーと違い、日焼けしている人でもうてる。
17.マイクロ波は光と高周波の間の波長であり、例として多汗症治療のミラドライがある。
18.ラジオ波は電波であり、超音波は音波。音波は、電磁波ではなく弾性波である。
19.高周波のリフトは、実際は上げるというより、中央に寄せている。
20.PRPのダブルスピン法は、血液を2回遠心分離し、採取部位の血小板の密度を上げてからとる方法。赤い部分も使うと血小板が多く入るが、注射後しばらく皮膚も赤くなる。
21.一つの案として、潰瘍のPRP療法は3~4週おきに行う。
22.エピデュオ外用を行う前に、ヒルドイドソフト軟膏を塗ると、治療のドロップアウトが少ない。
23.外用剤の刺激感が多いときは、塗って10分後に洗い流すショートコントロールセラピーもよい。
24.ニキビの外用剤は、保湿後に塗っても効果は落ちないというデータがある。
25.そばかす型老人性色素斑は、20歳以前に外でスポーツを行っていた若い女性に多い。
26.毛髪の幹細胞は、外毛根鞘の最外側にいる。
27.CO2レーザーは、熱作用で神経終末がシールされるため、術後の痛みが少ない。
28.ホクロは真皮乳頭層までCO2レーザーで蒸散する。ウイルス性疣贅は、真皮深層が露出するまで、深めに蒸散する。脂肪までは出さない。足底のウイルス性疣贅にはVビームも有効。
29.孤立型汗管腫は汗腺まで距離があり、癒合型汗管腫は汗腺までぎりぎりのところにある。
30.RFエネルギーは、脂肪の間の線維性隔壁を伝わる。
仙台には15年くらい前に一時期住んでいたことがありますが、街の発展には驚くばかりです。
仙台駅から学会会場の仙台国際センターまで新しくできた地下鉄ですぐでした。
暖かい空気と冷たい空気が入り交じった緑の中で、とても気持ちのよい爽やかな時間を過ごすことができました。癒やしの力は大事ですね。
学会運営をされた方、全国から学会参加された方、皆さんお疲れ様でした。
この学会で学んだ知識は、きっと全国の患者さんたちに還元されるのだろうなと思います。