世間ではタバコの害が叫ばれています。
ほとんどの方が異論はないと思います。
おそらく今現在タバコを吸っている方もそう思っているのではないでしょうか。
禁煙外来とは、主に内服薬や貼り薬でタバコをやめる治療を行っている外来です。
現在、居酒屋なども含めた禁煙場所の拡大が、政治では議論になっているようです。
タバコは内科、外科、脳神経外科等様々な病気の悪化因子となりますが、皮膚科でも当然よいことはありません。
女性陣にとっては、産婦人科系の病気のリスクも上がります。
例えば以下の病気が挙げられます。
不妊、月経不順、早期閉経、妊娠出産の異常(子宮外妊娠、流産や死産、胎児奇形等々)など。
そのため、健康と美容のため、当院でも禁煙治療を推進しています。
美容がきっかけで禁煙治療を始めても、長期的にその方の健康につながれば、内科系などさらに大きなメリットが生まれると思っています。
一般論ですが、喫煙による一酸化炭素は酸素に比べて血液中の色素であるヘモグロビンと結合しやすいため、酸素が体中に行き渡りにくくなります。
加えて、タバコに含まれるニコチンが毛細血管を収縮し、血行も悪くなります。
また、胃粘膜を荒らして食欲、消化吸収をにぶらせ、皮膚の再生に重要なビタミンCの消費を増加させます。
そのため皮膚は栄養や酸素が不足した状態になり、色、つやが悪くなります。
タバコを一箱(20本)吸うと、500mgのビタミンCが失われます。この量は一日の必要量である100mgの5倍にもなります。
タバコを吸うと、ビタミンCの抗酸化作用が奪われるので、確実に老化が早まります。
僕の私見ですが、タバコを吸われる患者さんの肌は、何となく顔全体が黄ばんでいるような印象があります。
喫煙は活性酸素も生じますので、活性酸素が皮膚に及ぼす影響であるシワの形成、シミの形成、毛穴の開大にもつながります。
ちなみに、タバコの皮膚に対するダイレクトな害は、いくつかの皮膚科論文でも発表されています。
「喫煙している人はしていない人に比べ、皮膚の弾力線維変化が進み、しわが早期に形成される。」(Koh,JS らが2002年に雑誌Int J Dermatol 41:21-27で発表)
「喫煙により皮膚の角質水分量が低下する。」(Smith,JBらが1996年に雑誌J Am Acad Dermatol 34:717-732;quiz 733-714で発表)
「60歳以上の顔面の老化程度の検討をすると、タバコ1日20本の喫煙を行っていた人は10年分の生物学的老化に相当していた。」(Leung,WCらが2002年にBr J Dermatol 147: 1187-1191で発表)
当院で行っている禁煙外来の治療は、内服薬(商品名チャンピックス)を3ヶ月使用していただくだけです。もうかなり前からある薬です。
この薬は、一言で言えば、タバコを吸いたいという気持ちがなくなる薬です。
喫煙者の方には想像できないかもしれませんが。
禁煙治療の料金は、保険が効きますので自己負担3割負担の方ですと、3ヶ月で1万3千円~2万円ほどになります。
毎日タバコ一箱を3ヶ月買い続けるよりは圧倒的に安くなります。
検査は呼気の一酸化炭素濃度を外来で測るだけで、痛みはありません。
タバコの煙に含まれる一酸化炭素は体内のヘモグロビンと強固に結合して残存するため、過去3日間の喫煙状況が数字に反映されます。この数字が治療によって目に見えて下がっていきます。
僕自身、父がかなりのヘビースモーカーだったので、相当な副流煙を20年近く吸っていたことになりますが、当時は副流煙の概念があまりありませんでした。
この禁煙治療は、ご家族の健康ためにも是非おすすめ致します。
品川院のビルの近くにも喫煙エリアがあるのですが、そこの近くを通るたびに感じるものがあります。
タバコは、自分一人の意志の力で克服するのは無理に近いと言われています。
病気なので意志の力ではなかなか治せないのです。
ひょっとしたら病気と気付くのが治療の一歩目なのかもしれません。
意志の力でなく医師の力を少しだけ利用してみてください。
心臓に関しての話ですが、5年禁煙すれば、喫煙経験のない人と同じ程度まで戻るという研究報告もあります。
個人的には、肌にとってよいことを二つ行うよりも、悪いことを一つなくす方が美肌には効くのではないかと勝手に考えています。
禁煙治療に興味のある方は、品川のイーストワン皮膚科形成外科(03-5479-3388)、銀座の東京皮膚科形成外科(03-3545-8000)までお気軽にご相談ください。
外来にいらっしゃった方には、治療のシェーマをお見せしながら詳しく説明させていただきます。
There is oral medicine working for smoking cessation.