今回は肌の色を規定する遺伝子の話をします。
色白を規定する因子は、皮膚が白くなる病気の因子と共通しているという話です。
健常な日本人の皮膚色の違いにも、白皮症やその他遺伝性色素異常症の原因遺伝子が関与しているという研究報告がなされているのです。
健康で色白な肌に憧れる方は多いですが、元々色白な方は、病気の色白と共通した部分がときにあるのです。
以下に詳しく説明致します。
皮膚の色に関わる遺伝子では、メラノコルチン1受容体(melanocortin 1 receptor: MC1R)の遺伝子が最も研究されています。
北欧では多くの多型がみられ、多型が起こると、関連する機能が落ちると考えられます。
すなわち、皮膚の色でいえばメラニンの合成能が低下し、皮膚は白くなります。
他に注目されているものは、メラニン合成に関わる遺伝子です。
眼皮膚白皮症(oculocutaneous albinism: OCA)の原因遺伝子もその一つです。
眼皮膚白皮症とは、皮膚全体が白くなり、眼症状(羞明、眼振)を伴うことがある病気です。
実は、この眼皮膚白皮症(OCA)原因遺伝子の多型が、健常日本人における遺伝的因子によって決定される皮膚色の違いの25%を規定しています。
つまり、日本人の皮膚の色の違いは、白皮症に関連してすでに明らかにされている遺伝子多型の積み重ねによって決定されているのではないかと考えられているのです。
現在分かっているのは、性別(女性であること)、その他4つの遺伝子因子が、日本人の皮膚の色の違い(色白化)に関わっていることが明らかになっています。
その4つの遺伝子とは、OCA2x14-A481T、OCA2ex18-H615R、OCA2x11-T387M、OCA4ex7-2-T500Pになります。
OCA2遺伝子の変異型で最も多いのはA481Tという変異で、これは481番目のアラニンがステオニンに置き換わっています。
この、当初病的と認知されていたA481Tは、日本人の20%がヘテロ接合でもっている変異です。
20%とはきわめて高い頻度ですが、この状態で必ず色白になるわけではありません。
しかし、実験によりA481Tという変異でメラニン合成が70%に低下すると報告されています。
今後はこのような遺伝子に着目した美白治療(遺伝子治療)がいつか開発されるかもしれませんね。
(引用・参考文献 雑誌Bella Pelle vol.2 No.1 2017 P32~36より)
余談1
人種間の皮膚の色の違いは、人類の進化に関わっています。
赤道直下と比較して、緯度が高くなればなるほど日光の紫外線量は減少します。
人類が中央アフリカから世界に広がっていった当時は食事でビタミンDを十分摂取することが難しく、紫外線による皮膚でのビタミンDの合成は重要でした。
皮膚が黒いと表皮内に紫外線が届きにくいため、紫外線の弱い環境である北に向かった人たちは、皮膚を白くする必要があったのです(いわゆる白人)。
赤道直下では、紫外線が強くビタミンD合成よりむしろ紫外線による皮膚障害の方が問題となるため、多量のメラニンによって紫外線を防いでいました(いわゆる有色人種)。
紫外線によるメリットのほうが大きければ皮膚の色が白くなり、デメリットの方が大きければ黒くなるのです。
余談2
目に見える肌色は下記の式で定義されます。色々なものが混じり合っているのですね。
目に見える肌色=角質反射光+メラニン反射光+血色反射光
角質ではメラニン色素の色はすでに薄くなっていますが、表皮基底層ではメラニン色素の色が反射し、血管ではヘモグロビンの色が反射します。