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遠隔診療(オンライン通院)のメリット・デメリット 皮膚科との関係

遠隔診療(オンライン通院)のメリット・デメリット 皮膚科との関係

· 奥野公成 · NEW, その他 · No Comments · Kosei Okuno

皆さんは「遠隔診療」という言葉をご存じですか?

一言で言うと、「テレビ電話受診みたいなもの」です。

実際はテレビではなくパソコンやスマホを患者さんが使って、パソコンの前の医師と話すのですが、イメージとしましては、パソコンでのオンライン英会話練習がそれに近いのではないでしょうか。

僕自身この遠隔診療が美容医療や皮膚科の業務に今後大きな影響を与えるのではと感じています。

この遠隔診療が当院でも始まりそうです。

今回は、最近のトピックであるこの遠隔診療について述べたいと思います。

まず、この話がいつ頃から出始めたかということですが、平成9年12月に「離島・へき地の患者」、「特定の慢性患者」、「原則初診対面」という限定的な条件下において遠隔診療が厚生省から認可されました。

その後平成27年8月に「離島・へき地などの特定の状況や、特定の疾患に限らず一般的に遠隔診療を活用可能」、「対面診療を組み合わせる限り、初診は対面に限らない」という解釈が厚生労働省より通知されました。これが、厚生労働省による「事実上の遠隔診療解禁通知」となり、これ以降世間から多くの注目が集まるようになりました。

これで、直接会わなくても適切な型を通した受診であれば医師法に違反しないという安心感が生まれました。

僕自身がもっていたイメージですが、遠隔診療のイメージというと、なんとなくドクターコトーのような離島やへき地に一人ぼっちのお医者さんが離れた大都市の専門ドクターから指示を受けて医療を行うようなイメージでした。

ですから、患者さんがお医者さんと話すというイメージではありませんした。

 

しかし、この現在行われている遠隔診療の現状はどうも違うようです。

一般に多いのは精神科・心療内科のようです。

この遠隔診療に向いている診療科は「患者さんの身体にあまり触れなくてもよい科」で、向いている患者さんは、「多少のIT理解力のある患者さん」です。

私の両親は、スマホ・パソコン含めインターネットを全く使っていないので、そういう人は無理と思います。

となりますと、やはり最初に広がっていくのは、「都市部の精神科・内科・皮膚科・美容クリニック」になります。

内科については、例えば高血圧だけの患者さんだと、血圧手帳を写真でとって医師に送るという方もいるようです。

ある世間一般のアンケートによりますと、回答者の85%が何らかの遠隔診療を受けてみたいという結果が出たようです。

皆さん忙しいのでしょうね。

 

遠隔診療の具体的な流れですが、以下のようになります。

予約をオンライン上で取り、問診票を記入→予約した日時に医師と画面を見ながら話す→クレジットカード経由で料金が引き落とされる→薬・処方せんを配送

 

次に遠隔診療の一般的なメリット、デメリットをまとめたいと思います。

 

メリット

1.忙しい方にとって受診が楽なので受診を続けやすい。

(移動の時間、待ち時間がなくなり、会計処理等の手間がかなり減ります。ビジネスマンだけでなく、育児中の方、高齢の方、寝たきりの方、引きこもっている方などにもよいと思います。また、今までよりこまめに受診することも簡単です。1ヶ月に1回受診だったのが、2週間に1回とか。ちなみに、一例ですが禁煙外来について言えば、2ヶ月以上治療を続けられる人は5割で、遠隔診療だと7.5割になり、治療の脱落率がかなり減ります。)

2.もし予約した日時を忘れていても、受診できる可能性がかなり高い。

(なぜなら、受診を忘れていてもクリニックから電話がかかってきたその時点で予約を思い出し、その時点で受診できるからです。)

3.手間以外の心理的な受診のハードルが下がる。

(話す時間が限られているので、患者さんにとって長く拘束されるのでは、という心配がありません。怖い医師や話が長い医師でも話す時間が限られているので対面よりは気楽です。対面だとしにくかったちょっとした予防・健康相談など、対面よりも気楽に回数多く受診できます。)

4.患者さんにもよると思いますが、医師に自分の家や職場など背景を見てもらうことができます。

5.家であれば患者さんが忘れ物をすることがなくなります。薬手帳や、残薬の量もすぐ確認できます。

6.県をまたぐなど、極めて遠くからでも受診できます。

7.受診の時間枠がある程度決まっているので、患者さんが、話す要点を事前にある程度頭の中でまとめてくれる可能性がある。

デメリット

1.もし身体に触れる検査、例えば採血、触診等が少しでも必要になった場合、日を改めて病院・クリニックにいらしていただく必要があります。

(つまり、通院の回数が増える可能性があります。)

2.実際に人と会うのが好きな方にとっては、受診の満足度が物足りなく感じるかもしれません。

3.医療機関の予約料金の設定にもよりますが、一般的には直接の対面受診よりも遠隔受診の方が少しだけ料金が高いケースが多くなると思います。

しかし、交通費や待ち時間、会計時間がなくなることを考えるとトータルでは遠隔受診の方がコストは安くなると思います。

4.現状初診だけは対面になる可能性が高いのですが、その後延々と続く再来でずっと会わなくなる可能性があり、かつ診察時間の限られているので、病気の見落としにつながる可能性があります。

5.来る手間がなく医師にしか会わないので、依頼されたにせ患者が出る可能性があります。

 

次に、皮膚科だけに予想されるメリット、デメリットを上記以外のことで述べたいと思います。

メリット

1.一般的に他科と比べ患者さんの数が多いので、患者さん個々に適切な時間配分ができ、医療の質が上がる。

2.化粧品や石鹸など、日常品の内容をチェックしやすい。接触皮膚炎の原因検索に役立つかもしれません。

デメリット

1.直接受診しない患者さんの割合がどんどん増え、病気の見落としがなされる可能性が出てくる。

(時間や視野の制約がありますので。例えば直接皮膚を見るのと、画面で見るのとでは色が少し違います。遠隔診療を選ぶ患者さんが増えれば、皮膚科医がどんどん「非触科医」になるわけです。遠隔診療の割合が予想以上に大きくなると、「通販ドクター」が出てこないか心配です。)

2.いつもの薬処方だけの患者さんなら関係ないのですが、皮膚を見たい場合、患者さんのうまい協力が必要となります。後頭部などは画面で見るのは結構大変かもしれません。

3.オンライン受診は通常10分くらいの時間枠をおさえるので、皮膚科のような受診患者数が多い科(世間一般の皮膚科診察時間平均5~6分)だと、待合室に待機している普通の受診患者さんをオンライン受診の方のために待たせてしまう可能性がある。

4.医師にとってのデメリットになりますが、人工知能や画像技術が発達してくると、オンライン受診の診察医師が人工知能にとって替わられる可能性がある。おそらく精神科よりは「人間」が求められない気がするので。

 

遠隔診療の時代はこれから本格的に始まるのだと思いますが、情報技術は良くも悪くも私たちに思いもよらない影響を与えるのではと感じています。

僕は昭和の男なので、何となく対面の方が落ち着くのではと予想しています。

時代の流れにうまくのってこの便利な道具をうまく使いこなし、医療の質を高められるよう努力したいと思います。

遠隔診療という道具が、患者さんの長期的なメリットになればよいと感じています。

 

 

スマホはまだまだ色々な可能性を秘めていますね。

幸か不幸か未来は全く想像がつかないです。