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肝斑に重なる普通のしみにレーザーをうっても意外と薄くなる。

肝斑に重なる普通のしみにレーザーをうっても意外と薄くなる。

· 奥野公成 · NEW, しみ · 肝斑に重なる普通のしみにレーザーをうっても意外と薄くなる。 はコメントを受け付けていません。 · Kosei Okuno

こんにちは。

今回はしみに機械の治療を初めて行った方の話を述べます。

40代後半の女性がご友人の紹介で2022年7月に来院されました。

通常、自分の周りで美容治療を行っている人がいないと美容治療に一歩目を踏み出すのはかなり度胸が要りますよね。

若い時にエステで強い勧誘を受けた経験も一つの原因ではないかと思います。

ネットや雑誌で見てどういう治療があるのか頭で分かっている人でも、実際クリニックに来院し治療を受けるところまで行く方は直感で1%以下ではないかと感じています。

以下に治療の詳細を述べます。

2022年7月 当院初診

初診時にコイン状の大きなシミが両頬にありそれ以外に小さな点状のシミが多数ありました。特に左頬に大きなシミが多かったです。また、その大きなシミの周囲に点状の小さなシミを多数認めました。大きなシミもポツポツした小さなシミも種類は老人性色素斑と診断しました。加齢や日焼けなどの原因で全国民がいつかもつシミです。これは一方的に増え、色も面積も徐々に増します。ルメッカのような光治療やレーザーが一番効きやすいシミです。要はレーザーや光治療はポツポツしたシミや、コインのようなシミに効きやすいということです。

また、両頬骨部のシミのその背後に淡い茶色を認め肝斑もあることを否定できないと考えました(写真上は見えにくいですが)。肝斑は女性ホルモン、摩擦、日焼けなどが原因の中年女性を悩ませるシミです。これはルメッカのような光治療やレーザーが効きにくいです。内服薬や外用薬が比較的効きやすいです。通常肝斑は放っておいても年齢が老人に近づくと薄くなっていきます。

 

大事な点は、レーザーの方が光治療(ルメッカ)より効果が大きいということです。だから私の基本スタンスはレーザーを受け入れられる人にはレーザーをすすめています。しかし、レーザーの方が光治療より強く効きますが、赤みが数週間続く上、1週間のテープ処置が必要で、シミの色が数か月濃くなる炎症後色素沈着の副作用が3人に一人強で出る可能性があります。

効果について私の個人的な漠然としたイメージですが、レーザーは1回うつと半年後にシミのひどさが10分の3~4になり、ルメッカは1ヶ月に1回を6回行って10分の5になるイメージです。

光治療はレーザーより効果が優しいですのでテープ処置の面倒はありませんが、1ヶ月に1回の照射を数回から10回は繰り返さないといけません。膠着状態になったら間隔を空けるか完全に休んでいます。また、レーザーはスポットでしみ部位のみ照射しますが、光治療は1回1回ほぼ全顔に照射します。それ以外に光治療のメリットはシミ以外に皮膚の張り感、産毛の減少、毛穴の引き締め、顔の赤みなどにも若干効きます。ルメッカの副作用は半日ほど顔の一部に赤みが出たり、極めて稀に数か月炎症後色素沈着が出ることです。レーザーの短所が光治療の長所になるイメージです。

 

初診時に左頬の大きなシミ3つにQスイッチルビーレーザー治療を行いました。自費で約6万円です。また、そのシミの背後に肝斑疑いのシミがあるためその日からビタミンCとトラネキサム酸の内服を開始してもらいました。こちらは1ヶ月分で約2千円です。内服は長く続けないといけません。

 

レーザーとルメッカですが、例えるなら、ルメッカをディズニーランドの入場券とイメージしてください。買えば顔全体のシミをどれでも処理できます。レーザーはファストパスみたいなものと思ってください。さっさと消したい部分的な目立つシミをピンポイントで処理しすぐにスカッとできます。

 

2022年8月

左頬のレーザー照射後の赤みが大分落ち着いてきたのでルメッカの照射を開始しました。その後現在2023年5月に至るまで約1ヶ月に1回の照射を続けています。ちなみに、レーザー照射部位のみルメッカの照射を避ければもっと早くからルメッカを開始することも可能でした。

2022年10月

右耳前部のホクロを炭酸ガスレーザーを用い除去しました。

2022年12月

肝斑疑い部の治療目的にハイドロキノン軟膏5%という美白剤を処方しました(約2千円)。もやっとした広いシミ(肝斑疑い)はポツポツしたくっきりしたシミより手強いです。

2023年3月

ハイドロキノン軟膏5%で赤みやヒリヒリ感などの副作用が出なかったため10%のものに変更しました。

2023年4月 ルメッカ7回目の日(ルメッカ6回終了後の状態)

ルメッカ照射前の洗顔直後に写真を撮ったのですが、大きなシミも小さなシミもかなり減った印象です。右頬はレーザーをうってないので、右頬の大きなシミと小さなシミへの効果はルメッカによる効果と思います。

 

2022年7月と2023年4月の写真を並べてみます。

治療を続けて9か月経った肌はまるでメイクをしているのではと思うくらいシミが減っています。こういう女性に「母ちゃん、飯まだ~?」とかいう身構えない言葉遣いはおそらく自然に減るでしょうね。

ただ、大分シミは減りましたが両頬骨部に淡い茶色は残っています。肝斑そのものか老人性色素斑の取り残しなのだと思います。肝斑にルメッカとレーザーは効かないですから。

昔の私は背後に肝斑がありそうな老人性色素斑にレーザーをうっていなかったのですが現在はうつことが多いです。

肝斑が背後にあるとレーザー照射後の色素沈着が強く長く出る可能性が高まるから肝斑に重なる老人性色素斑にレーザーを照射しないドクターも多いです。ハイジャック犯がお客さんの前に立っていたら犯人と銃撃戦をしないという考えです。

最初に肝斑向けの内服・外用のみを行って肝斑をなるべく薄くしてから老人性色素斑のレーザー治療を行う施設もあります。しかし問題は肝斑がその治療でいつどのくらい薄くなっているか予測できないという点です。肝斑が薄くならなければ老人性色素斑にレーザーをうたないという考えでしょうから。少なくとも半年以上はかかりますし。そういう場合、患者さん方は目立つシミ(老人性色素斑)を毎日鏡で見ながら、通院を続けるような生活では、ずっと待てない気が僕はするのです。中年以降では今が残りの人生で一番若い一番大事な時期ですから。濃い明らかな肝斑ならこの方法でまだよいのかもしれませんが。

肝斑が背後にある老人性色素斑にレーザーを真っ先にうつべきかどうかの議論は分かれています。しかし肝斑が一時的に半年くらい濃くなっても老人性色素斑が薄くなるメリットの方が大きいのではないでしょうか。

世の中に対する私の何となくゆがんだイメージかもしれませんが、こういう患者さんに強い治療をしないで1ヶ月に1回顔全体のかなり優しい機械治療を延々と行うクリニックが多いように感じられます。稀に1ヶ月に1回の優しい治療を計50~100回やっていた方にも会います。全然よくなってないけど悪くなるのを抑えているからOK!みたいなロジックでしょうか。

皆さんは優しい男と強い男の二択でしたらどちらが好きですか?  (いつか優しくて強い男が現れることを願ってはいますが。。。)

 

ただ、一方で正直なところ今回の患者さんは地肌の色が白いためレーザー後の炎症後色素沈着は出にくいだろうなと初診時に思ってはいました。色白ということは強い力に対し反応性にメラニン色素を作る力が弱いからです。赤毛のアンのような色白な方はシミが多く出やすくて目立ちやすいですが治療も効きやすいということです。

地肌とシミの色の差があるほど治療は効きやすいのです。例えば白人の人に濃いシミがあるような。

皆さんに最もお伝えしたいのは、初診時から9ヶ月経った場合、この方が何も治療を選択していなかったら初診時に見えていたシミはもっと大きく濃くなり数も増えていたということです。

やはりシミも内臓の病気と同じで進行しますから。

シミ治療は美容治療初級者編(弱い相手)だと思いますので何も治療していない方はもったいないなと常々感じてます。

自分の顔が配られたテスト用紙だったら一番最初に手を付け解くべき問題なのです。

医療機器の治療は化粧品1兆円分でも出ない効果が出ます。

そして、凸凹した傷痕を残さないで色だけを抜く機械を開発した人って本当にすごいなと尊敬します。でもそれに呼応して一歩踏み出す度胸を出した1%以下の患者さんもすごいと日々目の前で感じています。たいていの人は頭で分かっていても怖くて行動にまでは移せませんから。でもどうかご安心ください。度胸を出した人たちを全力でお支え致します。

最後に、スマホでこの文章を読んでいた方々、文が長くなり過ぎてごめんなさいね。

 

余談

実家に帰省すると僕を兄と間違えた猫君が僕になれなれしくしてきます。このままだと僕は調子に乗っていつか猫君に対し御主人様ぶってしまうかもしれませんね。

しかしこの猫君は怪我をして手の数が少ないので、僕がどんなに忙しいときでも猫君の手を借りることは準御主人様としてはなるべく控えようと考えています。

猫君、「僕がいつか奥野先生の右腕になるよ!」なんて言わなくてよいから、自分が幸せになることだけを考えてね。都会で君を想うちょっとくたびれた準御主人様より。