先週銀座院で院内向けのレーザー勉強会が行われました。
テーマはレーザー機器の安全な使い方です。
日頃しみ、脱毛、しわ治療などで使うことが多いレーザー機器は、適正な使用を行えば素晴らしい効果を発揮しますが、一歩間違えば医療事故を引き起こしかねない可能性も持ち合わせています。
ですから、慣れた頃にときどき兜の緒を締めてお互いの注意喚起を図らなければなりません。
その点では自転車や自動車の運転と似ています。慣れた頃が怖いのです。
下記はレーザー使用時のスタッフ用眼球保護メガネの種類を示した写真です。
レーザー機器は各々の機種でレーザー光の波長が違い、それぞれの波長の光をブロックするメガネを各レーザーごとに着用しなければなりません。
メガネに書かれた波長を確認せず、違うメガネをつければ安全上全く意味がないのです。
その他として、レーザーの特性、使い方、置き場所、点検などの話がありました。
この勉強会のときに、約10年前に勤務していた他のクリニックでの出来事を思い出しました。
ある若い看護師さんがレーザートーニングというしみ治療の施術をトレーニングしていたときの出来事です。
レーザートーニングは肝斑などで行われる、レーザーをあえてやさしくうつ治療法です。
透明のクリアファイルに顔の絵が書かれた黒い紙を入れ、レーザーを手順に従いその紙にぱちぱち打っていました。
実際の患者さんに行う前に、このように紙に照射したり、スタッフ同士で照射し合いトレーニングします。
そのやり方自体は彼女が考えたものではなく、他のスタッフと同様にしていただけです。
そのときあまりにも驚くべきことが起きました。
それは、クリアファイルにレーザー光が反射しその看護師さんの片目に入ってしまったのです。
私はその日出勤していなかったので実際の場面は見ていなかったのですが、非常に稀なことが起きてしまったのです。
それによりその看護師さんの片眼視力はほぼ消失してしまいました。
あと60年くらいは使う予定だった目です。
大学病院の眼科を受診した際、あまりにもピンポイントに視神経の一番大事なところへレーザー光が当たっていたようで、眼科の先生もかなり驚かれたようです。
しかし、残念ながら私がそこに勤務していた残りの期間にも彼女の視力が回復することはありませんでした。
そして、彼女にとってさらに残念だったのは、そのトレーニングの際、レーザー光を保護するメガネを身につけてなかったことです。
それゆえ、自分の行為についてその後深く苛まれていたようです。
しかし、私は彼女を責めることができません。
おそらく職場の先輩たちも保護メガネをせずレーザー照射のトレーニングをしていたでしょうから。
自分だけがメガネをつけるとは先輩の前では言いにくいでしょうから。
そして私は、その事故のことを知った際なぜクリアファイルに紙を入れてレーザーを照射していたのか、それがまず不思議でした。
なぜなら、クリアファイルは表面がピカピカしていて硬くていかにも光を反射しそうな雰囲気が漂っているからです。
おそらく、中の黒い紙がレーザー光に反応して焼かれて飛び散るのを防ぐ、もしくは紙が燃えても外に広がらないようにする目的だったのではないかと推測しています。
その後約10年、彼女に会うことはなかったですし、彼女がどこでどのように過ごしているかは全く分かりません。
同じ青い空のもと、彼女が少しだけ幸せを取り戻しているといいなと願っています。