最近ある患者さんが髪に何かついているということでいらっしゃいました。頭に痒みがあります。
勉強熱心な当院のあるスタッフが、顕微鏡を見てスケッチしてくれた絵を下記に示します。
さて、これは何でしょう?
ヒントは、「昔流行ったものです。」
もしかしてオ〇リナ?
保育園時代手にもっていた鈴もこういう形をしていたような。。。
上記の絵は下記のような顕微鏡のイメージ像を書き写したものです。
真ん中を上下に通っている黒く太い棒が髪で、そこに袋が付着しています。この袋がスケッチされました。
ある虫が抜けた後の抜け殻が、白い付着物として患者さんの髪についていたのです。
現在でも幼児や学童で突発的に流行ります。
下記の写真が成虫になります。
正解は頭シラミです。
この虫は毛穴から吸血します。ですから頭に痒みを生じます。人の血を吸って生きているのです。
この虫は、現代では戯れて遊ぶ幼児・小学生間に時折感染者がみられます。
帽子、マフラー、ブラシ、クシなどの共用は避け、シーツ、枕などのリネン類はよく洗う必要があります。
卵は7日で孵化し、幼虫となり、その後10~14日で成虫になります。
頭シラミは人から離れても卵は10日間ほど、成虫は72時間余生きます。
治療は、市販のスミスリンL(フェノトリン0.4%)というシャンプータイプの外用薬を使用します。
医者が処方する薬ではありませんので、クリニックで検査をしたら近くの薬局で買ってもらっています。
10日間に4回、頭部に塗布します。ちなみに、卵には効果がありませんので、ですから何度も使用しないといけないのです。
また、家族に怪しい方がいましたら一斉に治療することをお勧め致します。
ちなみに、疥癬というダニの除虫にもフェノトリンを使いますが、こちらは5%で、頭シラミで使うものより濃度が高いです。
最近のトピックですが、スミスリンLに抵抗性の頭シラミがアメリカで確認されています。
薬剤耐性の頭シラミが出てきたということです。
国立感染症研究所の調査によりますと、日本全体では5%程度の頭シラミがこのスミスリンLに抵抗性のようです。アメリカと関係が深い沖縄では96%が抵抗性のようです。
そのようなスミスリンLに抵抗性の虫に対しては、電気クシが有効です。これは、インターネットで購入できます。根気よく毛を梳いて虫体や虫卵を取り除くのです。
ちなみに、頭シラミは、保育園・幼稚園・学校の登校に関して何らかの規制はありません。プールも可能です。
皆さんも毛髪に怪しい白い付着物が見られたら、クリニックの受診をお勧め致します。
フケやゴミとの鑑別は顕微鏡での検査がよいと思います。
(引用文献 『日本皮膚科学会認定皮膚科専門医研修講習会テキスト 平成25年度冬期選択コース 皮膚科医が関わる学校保健』馬場直子著 日本皮膚科学会刊 頭虱の項目より)
(引用文献 『診療所で診る子供の皮膚疾患』中村健一著 日本医事新報社 p126~127 写真2枚もこちらから引用)
(引用文献『続 患者さんから浴びせられる皮膚疾患100の質問』宮地良樹著 メディカルレビュー社 p194~195)
ちなみに、アメリカでは、日本では承認されていないイベルメクチン0.5%ローションが日本の厚生労働省に当たるFDAから頭シラミに承認されています。
沖縄県の頭シラミはほぼ全例、日本の市販されているスミスリン外用剤が無効であり、感染拡大と遷延が公衆衛生学的な問題となっています。
(引用文献『日本皮膚科学会雑誌』第126巻 第5号 臨時増刊号 公益社団法人日本皮膚科学会 p971~972)
シラミというと、戦後に進駐軍の兵隊さんが子供の頭にDDTという除虫の粉をブシュブシュ浴びせたような話を母から聞いていて、昔の病気というイメージが皮膚科医になる前はありました。
でも現代でも突発的に流行るのですね。
髪に白い小さな付着物がついていてご心配な方は、一度クリニックの受診をお勧め致します。
最後に余談ですが、本日テレビで、サッカー日本代表がワールドカップ出場を決めた瞬間を見ました。
ワールドカップに行けなかったドーハの悲劇の時代が遠い昔のようです(このとき大学受験の勉強をしていた若者も遠い存在になりました。。。)。
選手の皆さん、おめでとうございます!