今回は今まで何故かたまたま触れなかったニキビ治療についてお伝えします。
どの医療機関でも飲み薬、塗り薬、何らかの光治療、ケミカルピーリング(酸の塗布)等はよく行われると思います。
ニキビの根本原因である皮脂腺をなくす機械が最近当院に入りました。
アグネス(AGNES)と言います。
皮膚表面から極めて細い針を刺して、毛穴の傍らに潜んでいる皮脂腺をピッと焼く治療です。
以下に説明致します。
要は針脱毛と同じ原理です。「根本原因を焼いてなくす」それだけです。
ニキビは非常にありふれた皮膚疾患で、ほぼ全国民が一度は煩うと思います。
しかも、かなり高い割合の方が長引くニキビや多数のニキビで悩んでいます。
40代になっても同じ部位の数カ所だけが出続けるような方もいます。とても憂鬱ですよね。
治療の説明のため、まずニキビのできるメカニズムですが、①古い角質(角栓)が毛穴をつまらせ、②皮脂が出られず毛穴の中にたまっていき、③その毛穴の皮脂の中にアクネ菌が過剰に増殖して炎症を起こし、④皮膚が赤く盛り上がる、という機序です。
出所させない刑務所で、暴動や火事が起こったようなものです。
(マルホ株式会社 患者用パンフレット「ニキビができてしまったら」の図より)
ですから、ニキビの治療はこのからくりのうち、どこかをストップさせればよいわけです。
現在の世の中の治療は主に下記の3つに分けられます。
1.毛穴のつまりを取り除く治療 2.皮脂をコントロールする治療 3.アクネ菌をたたく治療
このからくりをどこかで強くストップさせる治療があればよいのですが、現状皮膚科で行われている治療は内科的治療で、地道に毎日こつこつ取り組むマイルドな治療です。
この内科的治療のメリットは、おびただしい数のニキビの治療を、全部同時並行で一気に行っていけることです。浅く広くというイメージです。
一方、アグネスはどちらかというとニキビの外科的治療です。厳選何名様の片道切符の旅行です。
狭く強く限られたニキビだけを選択して治療していくイメージです。
細い針を一粒一粒のニキビに刺し、ピッと皮脂腺を焼いていきます。
これは上記2の治療がメインですが、実は1の治療もその直前に同時に行っています。
皮脂腺を焼いてなくすということなので、言わばそのニキビについてはほぼ根本治療になります。ほぼ再発しないということです。
欠点は施術者にとって手間がかかる点です。
一粒一粒焼いていくわけですから、多数のニキビを施術するのに根気が要ります。
だから世の中に広く広まってないのかもしれません。
下記の図のように、針の先端部近くしか熱くならないので、皮膚表面がやけどになりません。
稀に色素沈着が一時的に出ることはありますが、やけどあとの心配はありません。
ローリスクハイリターンな治療です。
現実的には、クリニックに1~1ヶ月半おきに来ていただき、最大30粒のニキビを1日で焼けます。
料金は、受診料等々の諸経費数千円に加え、1日ニキビ10粒以下が3万、11~20粒が4万、21~30粒が5万となります。
2~3日後受診し、脂を溶かすだめ押し治療をする際、その日はかなり安くなります。だめ押し治療をした方が効果は上がります。
ちなみに、人の顔には約20万個の毛穴がありますので、数百程度の皮脂腺を破壊しても皮膚が乾燥することはありませんのでご安心ください。
また、顔のニキビだけでなく、胸や背のニキビにも可能です。
リスクですが、ごく軽度の治療時の痛みと、治療後2日前後の軽い赤み・熱感が出る程度です。
1回でだいたい30%ほどがよくなるので、平均的には3~5回の施術を必要とします。
1回の治療は30分程度ですが、塗り麻酔の時間もありますので、来てから帰るまでだと1~1.5時間くらいになります。
下記に症例写真を示します。左が術前で右が術後です。
次の方は、上が術前、下が術後です。この方はアグネスを1回行っただけで大分改善しました。
下の写真は施術2ヶ月後ですが、メイクをしている状態だったので、メイクが厚くなく変化が分かりやすい顎下部分の写真を提示しました。アグネス以外の治療はビタミン剤の内服だけです。
現在も、このアグネスの治療モニター患者さんを募集しています。
対象は、にきび、ニキビあと、鼻の毛穴の黒ずみ(イチゴ鼻)、汗管腫の方です。
モニター患者さんとしてご協力いただける方は、当院のホームページ、学術活動等に写真を使わせていただくかわりに、2~4割引の料金で治療をさせたいただきます。
アグネスによる治療をご希望の方、ご興味をお持ちの方は、東京皮膚科形成外科 銀座院(03-3545-8000)までお気軽にお問い合わせください。
特に、なかなか治らない長い付き合いのニキビをお持ちの方は試してみる価値が本当にあると思います。
余談ですが、最近公開されたばかりの映画『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を観てきました。雑貨店主による悩み相談の映画です。
東野圭吾作品の映画は、11年前に観た『手紙』以来でした。
たまたまですが、二つの作品とも自筆の手紙が鍵になっていて、それが人の心と人生を大きく動かしていました。
今回の映画は、人と人とは見知らぬ人同士でもどこかで繋がっていることを気付かせ、目の前の一つ一つの縁を大切にする素晴らしさを描いている気がしました。
もしかしたら、人生に純粋な一期一会はないのかもしれませんね。東野圭吾作品には考えさせられます。
僕も日常のささやかな出会いを大事にし、皆さんの悩みと向き合っていきたいと思います。