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機械に取って代わられない皮膚科医になるために

機械に取って代わられない皮膚科医になるために

· 奥野公成 · NEW, その他 · No Comments · Kosei Okuno

新年あけましておめでとうございます。

今回は皮膚科医の将来と今後自分が行うべきことについて書いていきたいと思います。

昨年2017年はAI(artificial intelligence人工知能)、ロボット、IoT(internet of thingsモノのインターネット)、行動経済学、将棋等々様々なものがメディアで騒がれました。

自分は健康を維持し、今の仕事をあと40年は行いたいと考えていますが、昨年の話題には色々考えさせられました。

結論としては、今後の自分は機械にとって代わられない皮膚科医(もしくは診療科のない医師)を目指すべきではないかと感じました。

皮膚科という診療科は内科系と外科系の中間に位置しています。

内科系とは業務で手術を行わない科であり、外科系とは業務が手術メインの科です。

病院の当直は全国で内科系当直、外科系当直に分かれている病院が多いかと思いますが、病院によって皮膚科はどちらになることもあり、一部の病院では全科当直だけで行っているところもあります。

僕は医局所属時代にこの三つを全て経験しました。

医局とは医者同士の信頼関係に基づいた精神的なつながりの団体です。

ですから、皮膚科は内科系と外科系のエッセンスを取り入れた科なのです。

 

現在皮膚科の業務は以下の流れになります。

1.診断

2.必要があれば検査

3.治療(投薬、処置、手術)

 

僕が今後も医者を行ってあと40年以内にはこの1の業務は機械に置き換えられると考えています。

ゲームセンターの占い機や、駅や免許センターにある証明写真撮影機みたいな機械が診断をしているのではないでしょうか。その機械の前に人の列ができます。

そして、機械が診断したら機械が検査や治療の指示を人間に出します。

もちろん病名も検査も治療も保険診療の範囲を逸脱することは機械の指示では決してありません。そのように設定されてますから。

人件費も減ります。

医者が行う検査がなければ内科のほとんどの診断もそうなると思います。

機械の最初の導入時期は、医者が分からないとき機械に聞くという感じになるのだと思います。グーグルホームみたいな。

最近、インターネットにつなげて使う通訳機を、僕の好きな新宿の家電量販店で購入しました。

この機械はインターネットにつながないと使えないのですが、逆につながるとある意味とてつもなく巨大な「脳」につながります。

日本語をうまく聞き取ってくれないときもよくあるのですが、何十カ国語にも対応してくれます。実用性はまだ分かりません。

ということは、このような機械が洗練されて診断で登場したら、目の前の視覚情報・音声情報を読み込み、それをインターネットの中の世界中の診断情報・過去何十年という文献検索と合わせ、人間より最適な診断がくだせるようになるでしょう。

世界中の教科書やアメリカ国立医学図書館と闘うようなものです。「名人」を破ったボナンザと将棋をさすようなものです。機械には診断の「癖」もありませんし。全ての行動科学無視です。

日本の普通の医師は自分の出身医局の徒弟制の中で診断力をつけます。ですから、ある意味診断力の半分は自分のついたボスに左右されます。

もちろん機械は何語でも話すでしょうし、画面の文字でも表示するでしょう。目の前の相手の言語、人種を問いません。

曖昧さがないように、説明のプリントアウトもしてくれます。

患者さんも医者より機械の診断を信頼するでしょうから人間と機械の主従関係が逆転します。

 

では機械にとってかわられない皮膚科医を目指すために取り組むべきこととは何でしょうか。以下に思いつくものをあげてみます。

あと10年後にこの「妄想」を再読したら、どのような気持ちになるのでしょうか。

IoTがよほど発達しなければ下記は有効かと思います。機械はまず診断分野から入ってくるでしょうから。

(1)自分の学習は診断分野より(手を動かす)治療分野を重点的に行う。なぜなら、業務で使う脳よりも手を作るほうが難しいでしょうから。

(2)患者さんとのコミュニケーションを大事にする。方言のある地域での仕事は機械にとって換わられにくいかもしれませんね。精神科的な勉強も取り入れるとよいかもしれません。

(3)必要があれば医療機関以外で業務を行う。診断する機械は歩けないでしょうから。

(4)手を使う診断に力を入れる。触診、皮膚を拡大して見る機械、超音波診断機など。人間の手は物体の硬さ、温度、振動などなどを一瞬で感じ取れます。

(5)診断基準がはっきりしていない曖昧な分野に強くなる。もしくは、患者さんの人生でこの部分は診断しなくてよいと感じる力を高める。例えば、心電図のように機械が診断を記入してくれる分野は昔からあるのですが、最後は医者が確認し心電図を読み取って診断名をつけています。杓子定規に診断名をつけることが医療では大切ではないこともあるのです。

(6)新しいよりよい治療法を毎日考え、そしてそれを世に出す。機械は自分で新しいことを作れず、自分がその施設で可能な医療内容からしか指示を出せませんから。

(7)よく笑う。

(8)「うちは機械の診断機は置いてないんで!」と開き直って昔ながらの人間くささ主体の診療を前面に出し、いい味のおやじになる。人と人の関係を作るため吉野屋は券売機を置いていません。

 

色々書いてみますと感じることは、やはり「机の前で同じ場所の椅子に朝から晩まで座ってパソコンに向かっている人」、つまり一カ所にいる単なる物知りor単に判断するだけの人は要らなくなり、機械にとってかわられるのだと思います。

私の両親はインターネットを全く使いませんが、若いときからネットがある方やプリクラをとっていた年代の方だと機械の診断に違和感は少ないと思います。

僕の父は建築業でしたが、ほとんど喋らないで高低差のある移動しにくい場所を移動しながら黙々と手を動かしていた父の仕事の方が、百年以上の長期的なスパンで考えると僕の今の仕事より長く続けられる仕事なのかもしれません。

 

さて、話は変わりますが、最近自分がときどき行くスーパーで自動精算機が登場しました。

初日は、よい年をした人たちが「何だあれは!」という心配な顔つきでみな列に並んでいました。いつもと違うことに対する恐怖です。空港の入国審査みたいでした。

店員さんが商品の総額を出したら、自動精算機にお客さんがお金を入れて精算します。

店員さんはお金のやりとりの手間やストレスがかなり減ると思います。バーコードを読み取って総額を出すだけですから。技術の進歩は素晴らしいですね。

しかし、僕の心の中では、何となくレジ係の店員さんの数が減っているような気がして寂しい気持ちになり、今後の世の中を暗示しているような気がしました。

本当のところは分かりませんが。

残った店員さんたちはレジの業務以外に別の業務も行っているのかもしれませんね。

いずれバーコードの読み取りもお客さん自身が行うようになるのかもしれません。

 

下記の写真ですが、最初の頃は自動精算機の前にメーカーの方が立っていて、お客さんに使い方を説明していました。産業革命到来です。

 

僕も業務の幅を広げ、何とか時代の変化に適応しながら進化を重ね生きていきたいと思います。

40代前半はどの職業でも何らかのプロとして確立してないといけないと思いますが、僕は「患者さんの皮膚の悩みを解消し、自分と相手に笑顔をもたらす」プロを目指します。

そのために、様々なツールによる最新医療の勉強、日常業務で疑問点が湧いたら医学文献の検索を行い、それを皆さんの利益になるよう還元していきたいと思います。

さて、本年も皆さんにとってよい年になるよう願っております。

(蛇足ですが、一番上の写真はNTTドコモ代々木ビルです。)